猫との暮らし
2016年9月2日 金曜日
9月に入って、子供たちも学校へ行き始め、ハコニワも営業開始。
そしてまた何かと気ぜわしく働く主婦の私。
いつもの暮らしがはじまった。
猫たちだけは、そんな暮らしの起伏や移ろいに我感ぜずのようす。
しかし、淡々と我が道を行くキャラと思われがちな猫たちが、
実はとても感情が豊かで忠実な生き物なのだと私は知っている。
家族より遅れて、私がやっと椅子に座りコーヒーを飲んだり
食事を始めると、
おもむろに麦がやってきて、抱っこをせがむ。
座ったら抱っこしてもらえると思っているらしい。
私の肩に小さな頭を預け、おっぱいの後、ゲップをさせる時の新生児みたいな格好で。
私の首筋に麦のソヨソヨとかぼそい鼻息が当たってくすぐったい。
と同時に、母性という名の物質が私の中にジワ~と満ちてくる。
麻は麻で、私が料理をしている時は、その足元のキッチンマットが定位置。
バタバタ動き、麻の存在を見て見ぬふりしている私を見上げては、
何度も何度も目を合わせるまでニャ~と鳴く。
この渾身の上目遣いを無視できる人は多分いないと思う。
ましてやこの私ときたら、料理の手なんてすぐに止めて麻を撫でまわす。
だから息子のお弁当には猫の毛がもれなく入っているそうな。
息子は息子でそれをクレームではなく嬉しそうに話す。
もちろん夜は二匹とも私の布団で就寝。
一度夫の布団と位置を入れ替えて実験してみたら、麻は混乱してウロウロ、
クンクンしまくった挙句、ちゃんと私の布団を選んだのだった。
麦は実験を心外に思ったのか、その日は布団に寝なかった。
お風呂から出て脱衣所の戸を開けると、戸の外でじっと待ってる麦。
出かける私を不安な顔で見送るのは麻。
ベランダで蝉をゲットして、口元でブルブルする気持ち悪いのを
一目散に見せにくるのは麦。
ソファでうたた昼をしていると私は悪夢で目が覚める。
なぜなら麻が必ずお腹の上に乗ってるから。
私が手を滑らせ皿を割る時、足の小指を壁にぶつけて絶叫するとき、
まず一番に駆けつけてくれるのは麻と麦。
そんな私と猫たち蜜月の日々を、夫も息子達も嫉妬のまなざしで
恨めしそうに見ている。
彼らがどれだけ彼女たちに愛を注ごうとも、
麻と麦は明らかに私とその他の家族に愛情の配分で差をつけている。
私に8割の愛を、残りの2割を3分の1ずつにして彼らに平等にあてがっている風。
私は家族にこれ見よがしに、舞台女優風にのたまう。
「私がどんなに鬼のように振る舞い、悪態をついても、
実はどれほど慈悲深く心根のやさしい人間だかわかるでしょう。
こんなに動物に好かれてることが、それを証明してるのです!」と。
夫はお世辞笑いをし、息子たちは聞こえないふりをしているけれど。
今日も、麦は私が脱ぎ捨てた帽子の上でお昼寝中。
麻は私の手垢の染み込んだ布バッグの上でのんびりくつろいでる。
私の人生に、猫という生き物との暮らしが待っていたなんて、
3年前までは想像だにできなんだ。
神様ありがとう~。
そして生後間もない子猫を草むらに置いてきぼりにした無慈悲なお方に、
複雑だけど一抹の感謝を。
あんたが捨てなきゃ、麻と麦に会えてなかった。