こころ旅

2012年5月10日 木曜日


                      岩田智子 くさのうつわ

毎朝の私の習慣。
BSプレミアムで「梅ちゃん」を見ながら、朝食の後かたづけ。
子供たちに、「イッテラッシャーイ」と大声をあげたあと、
「にっぽん縦断 こころ旅」になだれ込みます。
火野正平氏の魅力は、この年になるまで、そしてこの番組を見るまで理解できませんでしたが、
うーん、素敵な人ですな。
かつてたくさんの浮き名を流した話も今は頷けるような。

そして、今日の「こころ旅」は茨城の常陸大宮市。
常磐線水戸駅から水郡線で輪行。
常陸大宮駅から船生分校という里山の小さな小学校へ
自転車を走らせる一行に、
私は懐かしさのあまり胸がいっぱいになり、実はそんな自分にすこし驚いていました。

私は夫と結婚してすぐ、夫の仕事の関係で数年この常陸大宮市で暮らしたことがあります。
あまりにも田舎での新婚の暮らし。
当時はその暮らしがあまり好きになれず、あまり良い思い出はないような気がしていました。

長男を妊娠し、水戸の産婦人科に通うため水郡線にゆられながら、
初めての出産、初めての育児に不安を抱えていたことを思い出します。

息子が生まれてからは、あまりある時間に少し辟易しながら
田舎道をたくさん散歩しました。
図書館に行って絵本を読んで暇をつぶし、
帰り道に田んぼの畦道の小さな花をつんで、家の食卓に飾りました。
久慈川の橋から、川面にむかって石を投げて遊ばせたり。
野菜の直売所で新鮮な野菜をたくさん買いました。

オシャレな物など何もない…育児だけで精一杯の日々。
時折、息子をチャイルドシートに乗せて、大好きな器を見に
益子や笠間に車を走らせるのが唯一の楽しみ。
私は息子の手をしっかり握り、ちょろちょろしないように気をつけながら
お気に入りをいくつか買い求めてきました。
息子も「これ、きれいねー。素敵だねー。」と私に精一杯合わせてくれます。
帰り道はご褒美に、トミカのミニカーを一つ買ってあげるというコース。

夫がつくばに転勤になった時は、やっとアカデミックな街で暮らせる!
と喜んだことも覚えています。

しかし、今朝の「こころ旅」で見たあの懐かしい風景。
愛おしい気持ちでいっぱいになる私。
あーこんな素敵なところで暮らしていたのね、と。
どうして、あの時そんなことに気づけなかったのかと。

あの時の図書館で働いていた同じ年頃の司書さんとは、今でもなんでも話せる心の友。
いろいろ助けて頂いた夫の上司の奥様や、一緒に育児をしてきたママ友達は
私の支えです。
畦道でつんだ小さな花。今も同じようにつんでいます。
益子や笠間で見た器の数々。今の私の仕事の芽になっていたことは言うまでもありません。
いつの間にか、私の「こころの風景」になっているあの暮らし。
嫌っていたと思っていた当時の暮らしに私は育てられていたようです。

息子も今は中学生。
昨夜は塾で夜遅く帰ってきて、今朝は部活の朝練で充血した目で出掛けていったことが
気にかかっています。
今は忙しくてゆとりのない息子の心の中にも、あの里山の風景が残っていて
のんびりゆったりした川の流れのようなものが下地になっていてくれたら…と
思います。

というわけで、最近はBSプレミアムばかり見ている私。
民放各局に嫌気がさしていることもあります。
ある俳優が二股を掛けていたという話題にとびついて
それをバッシングするタレント連中や俳優のコメントなどを流していることに
違和感を感じるのは私だけではないはず!
あの二股俳優は、なぜあれほどいじめられなければいけないのでしょう?
あのお方は息子がかつて見て憧れていたヒーローもの、「ハリケンジャー」のヒーロー様。
頼むから謝ったり、泣いたりしないで欲しかった…。

そして、常陸大宮、行きたくなったなー。

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